『マチネノ終わりに』はこんな人におすすめ
「マチネの終わりに」は、非日常的なドラマティックな恋愛願望がある方。
現実を離れてときめきを感じたい方、大人でしか味わえない恋愛の醍醐味を体験したい方におすすめです。
福山雅治と石田ゆり子が主演で映画化された「マチネの終わりに」。
著者の平野啓一郎氏のこれまでの著書は、哲学的でずっしりとした作品がおおく、読む人を選ぶ感じがありました。
ところが「マチネの終わりに」は読みやすく、息もつかせぬ展開であっというまに読めてしまいます。広い世代に楽しんでいただける恋愛小説です。
「マチネの終わりに」は40歳前後の男女の美しい恋愛が描かれています。
40代といえば人生もなかば。恋愛などの人間関係や仕事で悩んだり、ときにはトラブルに見舞われることがあるかもしれません。
「マチネの終わりに」ではそのような世代の男女が、互いを本当に理解し、心の支えとなってくれる人を求め合う姿が描かれます。
青春時代によくある恋愛の甘酸っぱさや情熱とは違う、大人の男女が深い心の結びつきを確かめあおうとするしっとりした恋愛模様に心惹かれます。
このような恋愛は、恋愛を始めたばかりのころにはなかなか味わえないかもしれません。
ある程度の人生経験を経た人、特に自分でも何度か恋をしたことのある人には、この作品の魅力ををより深く感じられるでしょう。
『マチネノ終わりに』を読んだらどんな気持ちになる?
主人公の男性は天才ともいわれた売れっ子のクラシックギタリスト。
ヒロインは何か国語も話せる才媛(さいえん、頭がよくすぐれた女性のこと)で、海外で活躍するジャーナリストです。
どちらも知性的で、自分の仕事に悩みをかかえながらも、誇りをもっている姿が魅力的です。
また、舞台となるのは東京やパリといった洗練された都会の街、そしてコンサートホール。豪華で日常を離れたシーンに、うっとりとさせられます。
しかし、この二人の生活は華やかなだけではありません。
芸術家として自分の限界に苦しんだり、仕事でショックなことがあったり。
さらに、結婚が身近な世代としての悩みもあります。現実と理想の間で悩む姿は私たちにも重なること。
そこでどう生きるべきか考えさせられます。
そして、お互いに心を強くひかれている二人が、様々な運命のいたずらやトラップによって邪魔をされ続け、なかなか結ばれないこの物語。
スリリングな展開にいったいこの後どうなってしまうのだろうと、ハラハラドキドキ。
せつない恋心に共感しながら読み終わったあとは、甘くそしてちょっとビターな気持ちを味わえるはずです。そしてパートナーの理想の形とはどんなものなのか考えさせられます。
『マチネノ終わりに』の奥付き情報
- ジャンル:小説
- 出版社:毎日新聞出版(文庫版は文春文庫)
- 著者:平野啓一郎 1975年生まれの日本の作家。
1998年に小説「日蝕」でデビュー、芥川賞を受賞。本作は著者が40歳の時に毎日新聞朝刊で連載開始、単行本化された。この作品で第2回渡辺淳一文学賞を受賞。 - 出版年:2016
『マチネノ終わりに』のあらすじ、要点
2006年、40歳を前にしたクラシックギタリスト蒔野聡史(まきのさとし)は、デビュー20周年記念のコンサートツアー最終日を赤坂のサントリーホールで迎えていました。
コンサートが大好評で終わったあとの打ち上げで、蒔野は知人に小峰洋子(こみねようこ)という女性を紹介されます。この時点で、すでに洋子にはアメリカ人のフィアンセがいることを知らされます。
打ち上げの席で蒔野は演奏の内容について洋子と語り合ううちに、洋子が自分のことを深く理解してくれていることを感じます。
ほかの誰も気づいていない、演奏家としての不調すらわかっているかのように。
コンサートの打ち上げ会場の隅で、二人は深夜まで話し続けます。海外生活が長く、パリにある通信社の記者として活躍している洋子は一時帰国中でしたが、治安の悪化しているイラクにまもなく赴任する予定だと蒔野に伝えます。
このコンサートの時から、二人には深い心のつながりが生まれ始めていました。
イラクの首都バクダッドに赴任した洋子は、蒔野の演奏CDを持っていき、彼の奏でる曲に心を癒される日々を過ごします。
メールのやり取りを続ける二人。ところがある日、彼女の働いている建物で、自爆テロ事件が起こったというニュースが流れます。
ニュースを知った蒔野はすぐに洋子にメールを送りますがなかなか返事が来ません。
洋子は危機一髪のところで命びろいをしていたのですが、大きなショックを受け返信できない状態だったのです。
心配した洋子のフィアンセは結婚を急ごうとしますが、この時洋子は蒔野との出会いを思い出していました。あの打ち上げの後で、彼と一夜を過ごしていたらどうなっていただろうと。
パリに戻った洋子は蒔野に思いをつづった長いメールを送ります。まもなく仕事でパリにやってくる蒔野に、「もう一度会いたい」と。
洋子は、婚約を解消することを考え始め、一方の蒔野も彼女との結婚の意志を強めます。
そしてパリに向かった蒔野は洋子に想いを告げ、彼女をパリの音楽学校で行われるマチネ(午後の演奏会)に招待するのでした。
このマチネの後で、フィアンセとは別れたことを告げよう考えた洋子。しかし、思わぬ障害にさえぎられて、洋子はマチネに行くことができません。
一旦は、お互いの心を確認しあったように思えた二人。しかし、その後悪意に満ちた他人の策略や運命のいたずらで会うことが出来なくなります。何度もすれ違う二人に、お互いの想いを語り合う日はくるのでしょうか。
『マチネノ終わりに』amazon評価、口コミ
Amazonでの総合評価は星5つ中の4.2。55パーセントの人が5つ星を付けています。
良い評価
「読み始めると、あれよあれよと一気に読了。」
「世に氾濫する恋愛小説が、いかに薄っぺらいか体感出来ます。」引用:Amazonレビュー
といったものがみられます。この本を気に入った人は、純粋に恋愛小説としての面白さに共感されたと思われます。
イマイチな評価
「少女漫画的」「一般庶民の私には別世界」
といった否定的なコメントもありました。
著者の平野啓一郎氏は、すこし難しい哲学的な小説や評論を書いてきた人です。
これまで平野氏の著書を読んできた人からみると、「こんな甘い恋愛小説を書くなんて信じられない」ということになってしまうのかもしれません。
また、普段恋愛ものを読まない人には、楽しみ方がわかりにくいかもしれないと思います。
中間的な評価
「そもそも惚れた腫れたの話なんざ、働き盛りの忙しい男はそうそう読まないが、恋愛小説で余韻にひたる自分が意外であり、少々恥ずかしくもあり」
引用:Amazonレビュー
というレビュー。
平野啓一郎ならではの、心理分析の鋭さが深みを与えているこの小説。普段恋愛ものを読まない人も、一読の価値はあります。
『マチネノ終わりに』のオーディオブック、電子書籍の有無、映画化有無、漫画版有無など
- オーディオブック:あり
- 電子書籍:indle版があります
- 映画化:あり
- 漫画版:あり