書評

書評『ペンギンハイウェイ』のあらすじと要約

ペンギンハイウェイを読んだ感想をご紹介します。

本書ではその名のとおり『ペンギン』が物語の重大な秘密をにぎっています。

このペンギンをめぐって、ときにはドキドキワクワクするような謎ときや少年の甘酸っぱい経験が描かれるのです。

主人公は小学4年生の「ぼく」。
研究者肌の少し風変りな少年です。

この「ぼく」が仲間とともにひと夏の経験を通じて成長していくさまは、心にさわやかな風を吹かせてくれます。

それではこれから、以下の順で「ペンギンハイウェイ」をご紹介していきます。

  • ペンギンハイウェイはこんな人におすすめ
  • ペンギンハイウェイを読んだらこんな気分になる
  • ペンギンハイウェイのあらすじ、要約
  • ペンギンハイウェイの口コミ、レビュー
  • ペンギンハイウェイのオーディオブック、映画、マンガ情報

 

ペンギンハイウェイの書評:こんな人へおすすめ

ワクワク、ドキドキを味わいたい人に

「ペンギン・ハイウェイ」は小学4年生の男の子である「ぼく」を主人公としたSFファンタジー作品です。

日本中どこにでもあるごく普通の新興住宅地に突然たくさんのペンギンが現れ、やがて街全体を巻き込む大きな事件が起こっていきます。

ペンギンをめぐる謎や街を飲み込もうとする大きな危険に、「ぼく」やその仲間たちが立ち向かっていく姿にハラハラ、ドキドキさせられます。

夏休みののびのびとした様子や秘密基地を作って遊ぶハツラツとした姿、年上の異性へのほのかな憧れといった、少年の心の動きが色鮮やかに描かれたシーンにワクワクすることでしょう。

 

子どもと一緒に楽しみたい人に

ペンギンハイウェイは大人向けの小説ですが、子供向けに角川つばさ文庫版も出ています。
大人も子供もそれぞれに楽しめる作品です。

※子供向けは、内容は同じで難しい言葉に注記がつくなど読みやすくなっているものです。

主人公の「ぼく」は面白くて頼もしい子です。
例えばいじめっ子をやり過ごすために、とんでもない作り話をまくしたててを混乱させる姿には思わずニンマリとしてしまうでしょう。

何があっても怒らず、たんたんといじめっ子をかわしていくのですが、それにはちょっと変わったコツがあるようなのです。

このほかにもあの手この手の方法でいじめっ子をかわしていく様は笑わずにはいられません。

冷静で、物知りだけどいばったりせず、知りたいことがあればどんどん追いかけていく「ぼく」に、大人も子供もきっとひきつけられるでしょう。

 

ペンギンハイウェイの書評:読んだらこんな気分になる

少年のまっすぐさに心が洗われる

この「ぼく」の姿はとにかく「まぶしい」の一言。

まだ人生につまづいたことがなく、必ず結果が出ると信じてまっすぐに努力する姿。
必要以上に空気など読まず、マイペースで楽しく生活する姿がほほえましく感じました。

物語の中で最終的にはあるものを失ってしまうのですが、それでも「ぼく」は泣きません。

まっすぐに生きているからこその強さがいとおしく、「ぼく」のまっすぐさに心が洗われるようです。

そして、最後に「ぼく」が謎を解き街の危機を救う様子は爽快で、同時に、少年時代の終わりを告げるような切なさも感じられる物語でした。

 

キャラクターにほのぼの

「ぼく」と仲良しの「歯科医院のお姉さん」が、独特のキャラクターで目を引きます。

キレイでいいにおいがするけれど、男の子のような言葉遣いのお姉さん。

「ぼく」をいじめている子に「麻酔なしで歯を全部抜いてしまうぞ!」と脅かしたりするおとなげない、でもちょっと面白いところがあります。

そんな「ぼく」とお姉さんのやりとりはほのぼのとして、自然と笑顔になります。

ただし、実はこのお姉さんには、大きな秘密が隠されています。
その秘密を、「ぼく」がある時はのんびりと、ある時は危険をおかして追いかけていく様子も見ものです。

 

ペンギンハイウェイの奥付き情報(ジャンル、出版社、著者情報、出版年)

ジャンル:小説
出版社:角川書店
著者:森見登美彦 1979年生まれ。2003年デビュー作「太陽の塔」で日本ファンタジーノベル賞を受賞。「夜は短し歩けよ乙女」で山本周五郎賞を受賞。本作で日本SF大賞受賞。
出版年:2010

ペンギンハイウェイのあらすじ、要約

「ぼく」と歯科医院のお姉さん

小学4年生の「ぼく」アオヤマ君は、宇宙や歴史など色々なことに興味をもつ賢い少年で、様々なことを研究しています。

近所にある小川がどこから来て、どこに流れていくのか調べる名付けて「アマゾン・プロジェクト」、クラスで強い権力をもっている同級生「スズキ君」の観察など。

そうやって努力していると、将来はとても偉くなれるだろうと「ぼく」は考えています。

そんな「ぼく」がいずれ結婚したいと思っているのは、歯科医院に勤めているお姉さん。

「ぼく」はお姉さんといつもおしゃべりをしたり、チェスをしたりして一緒に楽しく過ごしています。ところがこのお姉さんには、大変な秘密があったのです。

 

お姉さんの秘密とペンギンの出現

5月のある日、「ぼく」の住む街に突然たくさんのペンギンが現れ、大騒ぎになります。「ぼく」はこの事件について研究を始めました。

南極のペンギンたちが海から陸に上がる時に決まってたどるルートを「ペンギン・ハイウェイ」というのだと知った「ぼく」は、この研究を「ペンギン・ハイウェイ研究」と名付けます。

夏のある日、街中で「ぼく」は、クラスのいじめっ子スズキ君とその仲間たちに待ち伏せされます。「ぼく」は自動販売機に縛られ、置き去りにされてしまいます。

そこに現れたのは歯科医院のお姉さんでした。

そして紐をほどいてくれたお姉さんは驚くようなことをやってのけます。

自動販売機で買ったコーラのカンを放り投げると、なんとカンがみるみるうちにペンギンに変わっていったのです。

ところがお姉さん自身、なぜそんなことができるのかわかっておらず、「ぼく」にたいして「この謎を解いてごらん」と言うのでした。

 

森の中の「海」観測ステーション

「ぼく」はお姉さんと共に、なぜペンギンが現れるのか調べようとします。しかし、ペンギンの謎は深まるばかり。

そんなある日、「ぼく」はクラスの女子ハマモトさんにから森の奥にある「海」の話を聞きます。

「海」とは草原の真ん中に直径5メートルほどの透明な球体でした。

「ぼく」はハマモトさん、友人のウチダ君と3人で、この草原にパラソルと折りたたみイス、ハンモックを持ち込み、「観測ステーション」と名付けて「海」の研究を始めたのでした。

しかし謎はいっこうに解けないまま。

夏が終わるころ、この「海」はだんだんと大きくなり、街を巻き込む大きな事件を引き起こしてしまいます。

そして、この事件は「ペンギン」やお姉さんの謎ともつながっていくのでした。

「ぼく」は街の人々を救うことができるのか、そしてお姉さんの正体とは。「ぼく」と同級生たちの冒険が核心に迫っていきます。

 

ペンギンハイウェイのamazon口コミ、感想を解説

Amazonのレビューでは星5つ中の4.2。半数以上の方が星5つを付けています。

良い評価としては、「アオヤマ君、お姉さんをはじめ独特のキャラクターが魅力的」、良い意味で「現実逃避できる」「少年時代のことを思い出した」といったものもありました。

キャラクターの魅力を味わいつつ、謎を解いていく展開に、エンタメとしての面白さを感じた人が多かったようです。

その一方で、著者の森見登美彦氏が書いたこれまでの本と比べるとスピード感がなく、ギャグが少ないことに物足りなさを感じた方もいたようです。

確かにこの物語は、ほのかなユーモアがありつつも「ギャグが満載」というような作品ではありません。

しかし、この小説の中心は、少年時代ならではのわくわくに満ちた日常を描くということにあるといえます。

青空のもと、ペンギンと子供たちに癒されつつ、夏休みのわくわくを再体験する。そんな気持ちでこの物語を楽しんでいただけたらと思います。

 

ペンギンハイウェイのオーディオブック、電子書籍、映画化、漫画版有無など

  • オーディオブック…Audible版あり
  • 電子書籍…Kindle版あり
  • 映画化…あり
  • 漫画版…あり

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